>>はじめに<<


思いつくままに書き綴りました。
ブッダの教えを一人でも多くの人に伝導することができれば
この上ない幸福です。
仏教の真意をよく修学し、生活のうえで実践してゆけば
必ず満足のいく人生をいきることができます。

この文章を書き始めるに当たって、
最後に私の大好きなヨーロッパの哲学者、ドイツに生まれ、イギリスで死んだヴィトゲンシュタイン(1889-1951)の言葉を引用したいと思います。
ヴィトゲンシュタイのことを「哲学者」といっていいのかどうか判断に迷います。
ブッダは宗教者かそうではないのか、複雑であるように
この人もそういう意味でブッダと非常に近い人のように思います。
ブッダが宗教を天国から地上に引き摺り下ろしたように、
この人は哲学を哲学の言葉から日常の言葉に書き換えた人でした。
これはヴィトゲンシュタインの最晩年の意味深な言葉です。

「この人生には何が起こるようになるか分からない。
だからどのような理由にせよあとで君たちの気持ちが変わり、
私の訪問が望ましくないと思うようになったら、どうか躊躇せずにそう言ってください。
私は断られても、ほんのこれっぽちも気を悪くしたりはしません。
私は、この世の中には奇妙なことが急に起こることを知っているのですから。
これは私が自分の人生の中で本当に学んだ、数少ない一つなのです。」
ヴィトゲンシュタインはきっとこのように言っているのです。
古代より現代にいたるまで、ヨーロッパの文明を作った宗教も哲学も、
事の真意を微塵も明らかにはしていない、と。


7月14日
さまよえる人間−1.アジア型思考様態


晩春から初夏にかけて、山の小鳥たちは子を産み子を育てる仕事に忙しく
森の林間を飛び回っている。
巣立ち前の小鳥たちに親鳥は青虫を嘴(くちばし)にはさみ、巣と森の間を飛び回る。
いつかは蝶になり蛾に成長する生命を奪いながら、
小鳥たちはおのが生命を育んでいく。
ただ生きるための目的のために。

これら生態系を、エコロジーの自然的法則の美学として
疑うことさえしない人のことを、人々は'地球の美学者'といいます。
しかし、これらの思考を生み出した西洋型血統の根底には
狩猟民族の生活様態が深く根ざしています、
一方で農業を国の基本とするアジアの土着性農本主義には、
当然の感覚として「生き物を殺すなかれ」、というアジア型思考様態があるのです。

古くから農業文化を育んだ日本人の思考様態は
当然アジア型系統のうちに流れています。
一切の生き物を殺すなかれ、と明晰な形で文明史上市場最初に明言したのは、
インドの地で生まれたブッダでした。
そのブッダの説をさらに極度に進化させたのは、
ブッダと同時代のジャイナ教の開祖・マハーヴィーラ。
そして、その思想はインド・ヒンドゥー教の原型であるバラモン教に受け入れられ、
一切の生き物を殺すなかれ、という思考は
アジア全域の人間の感情の血脈のうちに流れるに至りました。

野菜のみを食して生きる人
−日本では精進主義、西洋ではヴェジタリアンと呼ばれる人−は
日本や西洋では少数派ですが、
インドでは今日でもヒンドゥー教徒の多くは当たり前のように、
生まれ生き死に至るまで野菜のみを食して生涯を終える人が大勢います。
人間の思考は何を食べているかによって決定される、
といわれる程に食と思考の関係は深く密接なのです。

(次回は18日の更新予定です)


囲む人々「一話一言」

疋田千秀「さまよえる人間」

「おもろい坊主を囲む人々」でつなぐ、一話一言。
日ごろのことを思いつくままに、気軽に書いていただきました。

第1回は、北茨城・佛等庵の疋田千秀さん。
タイやスリランカでの出家経験を持つ疋田さんから見た
最近の日本や世界の情勢を、落ち着いた目で描いていただきました。

全8話を順次、お届けします。