9月30日
初めての四国遍路一人歩き・2001年5月の日記から

5月24日(雨)
初めてのお四国行き。
お大師様と同行二人といわれても
色々なことが頭に浮かび、少々不安ではある。
山のようなスケジュールを蹴散らして来たからには
「もう何も考えないぞ」と心に誓う。

しかし、東京駅で早速"食欲"という煩悩にとりつかれ、駅弁で迷う。
結局、旬の味『鯛めし弁当』に決めるも、
売り切れだった駅弁『21世紀出陣弁当』が気に掛かる。
雑誌「サライ」にも掲載されたものである。
駅弁は列車が発車してから食べるものだが(誰が決めた?)、
それも忘れて、新幹線が東京駅を離れるのも気づかず
鯛めしのとりこになる。美味しい!!
冷蔵保存が可能になってから、弁当のお菜が薄味になって、
駅弁が美味しくなった。
しかし、何と言っても駅弁ナンバー1は
下北(下北沢ではない。青森県の下北半島)に行く時に食べた、
東北本線一ノ関駅の『朝もや弁当』だ(これは勝手な私のネーミング。

あれは夜行急行の「津軽」か「八甲田」に乗った時
(残念ながら両方とも今は無い)、
まだ薄暗い朝もやの中から聞こえる「べんとー、べんとー」の売り声。
睡眠不足の身体を腹の虫がたたき起こしさっそく買う。
言っておくがこれは、5年程前の話である。戦前の話ではない。
出来立てのあつあつ、ご飯も炊きたて、
弁当の箱が熱さで歪む程だったことをよく覚えている。
・・・今でもあるのかなー。

話はそれていくが、このとき以来下北半島の恐山にも随分通った。
5〜6回は行っていると思うが、年々と俗化してしまって、
有難さも恐ろしさも無い。
恐山という言葉のイメージだけで行くとがっかりするだろう。
私は霊感もないので山門に立っても何も感じなかったし、
イタコも体験してみたが、呼び出した霊との会話も
ちぐはぐでピンとこなかった。
イタコの順番待ちで、暑い中を2時間待っていたお陰で
口寄せにはいくつかのパターンがあるのが分かった。
お金を払ってまで(時間を使ってまで)
他人を呼び出す人は、まずいない。
連れ合い、子供、父母、祖父母に兄弟がほとんどである。
それらに対する答え方も、ある程度パターン化しているようである。
いつだったか、テレビの番組でマリリン・モンローを呼び出したら
その「霊」は東北なまりだったという話があるが、
まあ縁もゆかりも無い人が呼び出しても、向こうも出にくいし、
替え玉でもつかったかな?
そういえば、東北の地は転身説が多い。義経=ジンギスカンとか、
イエス・キリストが日本で死んだとか(これは資料館まである)、
東北は面白い所である・・・
何を書いているのか、今回は四国の話だった。
すぐに横道に入ってしまう。

さて、新幹線は名古屋に近づくも、いまだ雨。
今回初めての遍路ということで分からない事だらけ、
第一どこからあの格好をすれば良いのかが分からない。
自宅から白装束で出てくる勇気はないし、
向こうで着替えるとしたら、自宅からの着ている服はどうするのか? 
そうか! 自宅に送っちゃえばいいのか。
いや、待てよ、それでは自宅に帰る時が白装束になってしまう??? 
と、これが実は一番悩んだ。結局着替えは持ち歩く事になった。
歩く身にとっては荷物は少ない方が有難いので、
身軽で出掛けられるこの季節を選んだのだが、
それでも遍路の途中で2度も持っていった荷物を自宅に送り返した。
女性の歩き遍路にとって最低限必要な物は何かが、
歩き始めてすぐに分かったのである。
男性が書いた本では分からないのだなー、これが。

神戸に着き、みどりの窓口で徳島行きの
JRバスの切符を購入、3200円也。
徳島までバスで2時間の旅。
着いたら「ぶっかけうどん」を食べようと、
またしても気持ちは食べ物へ。
しかし、このぶっかけがなかなか見当たらない!
駅周辺でいくら探しても見当たらず、結局、以前食べた駅そばへ行く。
「ウーム、これこれ!」と、旅行気分だったのはここまで。
それから一番札所の霊山寺にいくための列車に乗ったが、
段々不安と楽しみがないまぜになった複雑な気分になり、
列車に乗っていても落ち着かず、窓から外の景色ばかりをみていた。

「何故、歩き遍路をしようと思ったのか、それも一人で」と
出掛ける前によく聞かれた。
この時は自分でも分からなかったが、
今、振り返ってみると人に疲れていたのだと思う。
人間関係ではなく、人のなかで50年も生きてきた事に疲れていたのである。
特別な悩みがあった訳でもないし、毎日、平凡に暮らしていても、
半世紀も生きると澱(おり)がたまって心も身体もメンテナンスが必要なのかもしれない。

(つづく・次回の更新は10月14日です)


囲む人々「一話一言」

石上瑠美子「初めての四国お遍路一人歩き」

「おもろい坊主を囲む人々」でつなぐ、一話一言。
日ごろのことを思いつくままに、気軽に書いていただきました。

今回は、松戸市で市民劇団の主催者にして、まつど観光大使、
また、活動映画弁士「万朶(ばんだ)るり子」としても活躍されている
石上瑠美子さんのお遍路日記です。
この四国遍路の旅の中で、藤川さんと出会い、
今も親交が続いています。
  >>石上さんのプロフィールはこちら