センレック赤血球の宇宙旅行 〜地球編〜

 

新連載はナゾのペンネーム「センレック赤血球」がかく、
大きなタイトルで些細なことを描きます。
今回はちょっとした出会いにやけに興奮!?


「第二十一号:タクシー選び」

 

前号のカイジャオ氏との対談を最後まで読んだ読者はよっぽど暇なんだろう。
そんな暇があれば発電でもしてくれ。
さて、前号の失敗対談の反省の意味を込めて、今回は役に立つコラムだ。

スイカを選ぶのにもコツがあるように、
ここバンコクでタクシーを拾うにもコツがある。
しかも同じ条件の下で育ったスイカですら出来の差は大きいのだ。
タイランドというええ加減な条件下で育った人間が車を運転しているのだ。
その質の差は想像を絶するほどに大きい。

スイカならまだいい。割って不味くても諦めればいい。
タクシーの場合、中に入ってみたら銃口がこっちに向いていた、
なんてことも、まま、ある。
そういう時は、スイカの20バーツ(60円)を諦めるように、自分の命を諦めるしかないのだ。

さて、そこでセンレック直伝、タクシーの選び方だ。

まず、止まっているタクシーは避けろ。
「こっちおいでおいで」と手招きするのが典型的な「ダメな」タクシーだ。
大体において、客が男の場合はソープランドに連れて行き、
カップルの場合は宝石店に連れて行き、
ご飯時なら、郊外のシーフードレストランに連れて行く。
ソープランドやシーフードなら、例えぼったくられても、
味わった商品価値分は間違いなく堪能できるのだが、
宝石の場合は、ぼったくられた上に商品までもがニセモノという悲劇になる。
分かりやすく言うと、シーフードが実は養殖モノであっても、
ソープ嬢の乳房がシリコンであっても、
その時の自分が、喰うなり、抜くなりで、満足すれば、まだ納得できるだろう。
しかしニセモノの宝石はどこまでもニセモノだ。
そういった意味でも宝石店と提携したタクシーだけは是非避けたいアイテムだ。

運転席の前に仏様をやたらと飾っているヤツは避けろ。
5センチくらいの座禅を組んだ釈迦とか、
有名なお坊さんのミニチュア模型とかステッカーが、
運転席の前に林立していたりというのは、よくある。
車内の天井に何やら手書きでおまじないみたいなのを書いてるのも、よくある。
そんな運転手は、金の指輪に金のネックレスと、なかなかの悪趣味ぶりだ。
そういうヤツに限って、釈迦の教えを他力本願的にしかとらえていないのだ。
本当の釈迦の教えを心に刻んでいるならそんな偶像は要らない。
心の弱い人間が、釈迦を前にタクシーの運転席で小さな犯罪を重ねるのだ。
全てを宇宙の一部として受け入れる心広き釈迦の御心で、
犯罪までも許容してしまうという見事な解釈により、
麻薬、暗殺、売春、賄賂が頻発する。
この国の犯罪率で、この国民の9割以上が仏教徒なのだ。
仏様があるからと言って安心してはダメだ。
仏教気違いみたいなタクシーは避けろ。

さて、次に、ボロタクシーは避けろ。
先日空港に向かう時、早朝の暗闇でつかまえたタクシーがボロだった。
メーターは全て「ゼロ」を指している。
動く気配無しだ。
そしてエンジンの響きが、ガタの来たボディの薄鉄板を振動させ、
ハウリング現象が車内で起きた。
ビーーーンと耳鳴り状態の続く高速のかっ飛ばし、しかもスピードが分からない。
これは恐怖である。
右折するときにガガガっと音をたててサスペンション近辺の部品が歪むのだ。
そのくせエアコンが強烈に効いている。
地獄の冷蔵特急だ。
挙句最後はパンクをして高速の途中で路上に放り出されたこともある。
その後、高速道路で「空車」のタクシーが拾えると思うか?
不可能なのだ。
やはり安全を考えて、ボロ・タクシーは絶対に避けろ。

次、穏やかそうな顔の運転手は避けろ。
タイランドは「マイペンライ(気にしない)」「サバイ、サバイ(気持ちいい)」と言いながら犯罪を行う。
こうやって山田長政も穏やかな表情のタイ人に毒殺されたのだ。
「優しそうだから」というのはこの国では判断基準にならない。
むしろ選挙ポスターで優しそうな笑顔を見せる大物政治家の息子が、
実は殺人で無罪になっていたりする恐ろしい国なのだ。
優しい顔は絶対に避けろ。

イカツイ顔の運転バカに乗ろう。
目が見えないくらいの濃いサングラス、ヒゲ、改造車、特注のハンドル、
バッファローの刺青、彼らは自分の世界を持っている。
人生とは自分の世界を構築すること。自分に信じる世界があれば、
そこを基準に確固たるゆるぎない世界観でもって外社会と接することが出来る。
周りから「変ねあの人」と言われても、不安にならない安定した精神力。
そんな運転バカだ。彼らの金ブチで濃いサングラスの奥には、
自分の世界に安住する安らぎと共に、その中で高みを追求するココロザシと、
セルフ・コンフィデンスなナルシズムで、威勢の良い運転をする。
しかしゲロ袋は忘れるな。

さぁ、怖がらずに、イカツい顔したオッサンのタクシーに乗ろう♪

次号も為になる豆知識、突撃レポートだ。


<バックナンバー>
第一号 接触事故 


第二号 黄金魂(ゴールデン・ファンク)

第三号 プラチナム・プライドの葛藤

第四号 プールサイドの憂鬱

号外!!!


第五号 幾何学の虜

第六号 焼肉思索

第七号 検査結果

第八号 お掃除♪

第九号 足首骨折男

第十号 決壊と漏電の夜

第十一号 広い世界

第十二号 ベトナムの深さ

第十三号 刺身定食の高いほう

第十四号 モッツァレラ・チーズの後味

第十五号 失恋、そして旅立ち

第十六号 混血の興奮

第十七号 生態観察ゴリラ編

第十八号 求む!釈迦のメルアド

第十九号 恐竜よりも怖いもの

第二十号 カイジャオ十二指腸