センレック赤血球の宇宙旅行 〜地球編〜

 

新連載はナゾのペンネーム「センレック赤血球」がかく、
大きなタイトルで些細なことを描きます。
今回はちょっとした出会いにやけに興奮!?


「第三十号:義足を枕に」

 


 バンコクの週末は賑やかだ。
  そんないつもの週末、伊勢丹と、とその向かいにある「BigC」という庶民向けスー
  パーマーケットをハシゴした。
  「BigC」だけで、充分用は足りるのだが、そのスーパーはあまりにも庶民向けで、
  「おまえはどうしようもない庶民だ!」とレッテルを貼られたような気分になるの
  で、最後に「伊勢丹」に寄って、そういう気分を中和させようという、庶民的作戦だ。
  しかし、バンコクの「伊勢丹」も実は、まぁ、目くそ鼻くそなので、余計に落ち込む 
  という。そんな庶民がうなだれながら、ダレた顔をぶら下げているデパートなのだ
  が、とにもかくにもハシゴ作戦だ。
 
  その「伊勢丹」と「BigC」を結ぶ歩道橋がある。その歩道橋が徹底的にダメ!なのだ。
  どうダメなのかと言うと、「段」の高さのサイズがどれもいい加減なので、普通の階 
  段のつもりで渡ると確実にスッ転ぶ。
  さらに、警官がテーブルと椅子を持ち込んで、おやつを食いながら、モグリ屋台から 
  罰金カツアゲするステーションを作っていることだ。コーラとか飲んでたり、夜中に 
  なるとビールの空き瓶も目撃したことがある。それくらいダメな歩道橋なのだ。
 
  さて、そんな歩道橋に、物凄い寝相の、真っ黒に煤けたホームレスが仰臥していた。 
  
  んーーー、どこかで見たことあるぞ、こいつ。
  っと遠い記憶を辿ってみると、そうだ、別の場所で、自分の義足を外してそれを枕に 
  して「ガーガー」寝ていた、ファンキーなヤツではないか!
  それにしても、今回の寝相は凄い。
  ちょうどポーズとしては、去年のタイの新聞で見た、麻薬の売人が現行犯で警官にピ 
  ストルで頭を打ち抜かれ、力なく崩壊した死体の雰囲気に似ている。
  恐らく、最初は枕にしていた義足は、もはや彼の手の届かないところに転がってい
  る。もちろん彼の中断された足なんかもパブリックに放り出され、露出している。
 タスキがけに絡む、真っ黒に汚れたカバンが、彼の体を2回転して強く締め付けている。
 上着がズリ上がって乳首が今にも見えん勢いだ。ズボンも半分下がり気味だが、 
  大きく開いた股のポーズによって、かろうじて腰に留まっている。
  つまり、彼の四肢は奔放に解放され、ゴロン、ゴロン、と2回転寝返りを打って、
 完璧に知性のタガと理性のタガが外れた様子だ。
 
  時はまだ、夕刻の帰宅ピーク。人間、そこまで豪胆になれるのだという強さを見せつ 
  けられた事件だった。
  勝海舟に天国でタメ口をきけるのは果たしてこのホームレスだけではないだろうか。 
  


<バックナンバー>
第一号 接触事故 


第二号 黄金魂(ゴールデン・ファンク)

第三号 プラチナム・プライドの葛藤

第四号 プールサイドの憂鬱

号外!!!


第五号 幾何学の虜

第六号 焼肉思索

第七号 検査結果

第八号 お掃除♪

第九号 足首骨折男

第十号 決壊と漏電の夜

第十一号 広い世界

第十二号 ベトナムの深さ

第十三号 刺身定食の高いほう

第十四号 モッツァレラ・チーズの後味

第十五号 失恋、そして旅立ち

第十六号 混血の興奮

第十七号 生態観察ゴリラ編

第十八号 求む!釈迦のメルアド

第十九号 恐竜よりも怖いもの

第二十号 カイジャオ十二指腸

第二十一号 タクシー選び

第二十二号:前立腺肥大と脱腸

第二十三号:失恋2 やっぱり失恋。。。

第二十四号:韓国式!ボードゲーム三昧の週末

第二十五号:おひねり

第二十六号:中華製知的老人

第二十七号:中国本土決戦

第二十八号:上海で死刑

第二十九号:打ち首獄門的勝利