新連載はナゾのペンネーム「センレック赤血球」がかく、
大きなタイトルで些細なことを描きます。
今回はバンコクにうごめくあの物体の話。
心臓の弱いかたは、お気をつけください。
「第八号:お掃除♪」
昨夜の夢の中で「国際平和」の考察を深めると約束したのだが、
国際平和は地球人に任せて、
センレックのタイトル通り、もっと大きな「宇宙」という視野で、
今回は「下水掃除」がテーマです。
ココ、バンコクはご存知熱帯気候。そして微笑みの国タイランド。
乾季は雨がほとんど降らない。
幸運にも豊かな水資源の為、深刻な水不足にはならな い。
しかし、そんな乾季の下水システムは、
大雨に洗い流される雨季と違い、ゴミが溜まって臭う。
よって、ヘドロ化したゴミを取り除くのに、
バケツによる汲み取り手作業が必要となる。
先日その作業に出くわした。
マンホールの蓋を開き、数人の表情の明るい男達が穴を見下ろしながら、
「ま、始めますか。」といった具合のリラックスしたムード。
ワタクシ、建設現場オタクというほどでも無いが、
土木建築系現場は、興奮の眼差しで見つめてしまうタイプ。
その時も「おーいいねー、やってるねー。」といった具合に、
微笑むたくましい男達の輪に入って、マンホールを覗いた。
が、その瞬間、全身の皮膚が、むしられて冷蔵された鶏肉のようになった。
そう、ビッシリとひしめくゴキブリ群が、
快適そうにその悪臭の中で生活を営んでいるのだ。
夜の路上で目撃するゴキブリの健康な姿を見ていると、
こういう世界が予想できなくは無かったが、実際に目撃すると相当のショックである。
歩いている道路のすぐ真下のゴキブリ天国を目撃してしまうと、
隠しておいて欲しかった浮気を知った心境だ。
見事に黒光りする肉厚な猛者たちが、上に下になりながら、
いつもより明るくなったマンホールの異常事態を警戒していた。
若干緊張状態のゴキブリ群と、完全緊張状態のボクを除いて、
取り囲む男達は皆一様に微笑んでいる。
この下水作業は、主に囚人のお仕事だそうで、
久しぶりのシャバの空気を下水臭と共に満喫しているのだろう。
皆満面のリラックス・ムードだ。
さすがタイランド、いつもの微笑みだ。
ボクが一人で悪寒を幾筋も背中に走らせながら震えながら見ていると、
一人の男が、これまたリラックスした状態で
「さ、始めましょう♪」といった具合に、
いとも簡単に「ひょい」っとその穴の中に入っていった!
もちろんゴキブリの大パニックと同時に、ボクもパニック状態。
その後、ゴキブリたちはどうやって逃げ散ったのかを確認せず、
ゴキブリよりも早く逃げ散ったのだった。
恐るべし、微笑みの国タイランド。
次号では、見つめ合う恋人同士ですら、
正反対方向の風景を見ているのだから、
そりゃ犬の悩みが猿に理解できるわけ無いだろ。という部分を詳しく
「漢語林」から素因数分解例を多数引用しつつ、
自己愛の存在を再確認したい。
<バックナンバー>
第一号 接触事故