創造する人々の、静かで力強いエネルギーに刺激を受ける
夜が明けて2日目。
早朝、藤川さんとピーノさんは托鉢に行ったという。行き先は小板橋家。まるで決め打ちの営業マンのようだ。
この日の午前中はわれらがボス、福本氏が帰京するため、皆で下山した。福本氏を見送った後、藤川さんお勧めの平潟港を望めるレストランで刺身定食を食す。
その後、ちょうど小板橋さんが個展をしているという、いわき市(福島県)のギャラリーへ。うわー!ここもなんて素敵な空間だ!緑そよぐ敷地内にあるのは、インド料理店「チャンド・メラ」とギャラリー「昨明」。このギャラリーも牛小屋だったそう。二階には小さな和室があり階下を見下ろせる。「チャンド・メラ」の開店12周年を記念して、「山人の空」というタイトルで開かれている三人展の真っ只中にお邪魔したようである。(おそらく)突然の訪問にも店主と奥様はおいしい紅茶にお菓子を添えて、暖かくもてなしてくれた。それにしてもがっしりとした体格の小板橋さんが、こんなにも繊細な絵を描いていらっしゃるとは…。童話の世界に引き込まれたような、ほのぼのした気持ちになった。

その後、陶芸家の真木孝成さんの工房「KAYA」へ。
山小屋風の室内からの眺めがこれまた素晴らしい。
健康茶をいただきながら、最近行ってきたばかり、というインドの旅の話を少しうかがった。そして工房もみせていただく。趣味で陶芸をしている私としては興味深々。のっているときは深夜2時まで、例えば湯呑みだったら5、60個作り続けるというから驚きだ。
「(土は)均一化されない厚みが面白い」という話に、思わず「うん、うん」とうなずいてしまった。そう、あまりにも形が整っていると美しいが面白みがない。器も人間も一緒である。
「作る」ことを生業としている人々に接し、「よくこんなことを思いつくなあ」という単純に感心すると同時に、誰から言われるわけでもなく自分で感じたことを表現することの大切さに気づかされた。

この日の夜はカツオとイカの刺身。欲張りな私たちはアサリや野菜を
「安い!安い!」と、たんまり買い込み、仲良く調理をしたのであった。
最終日はお昼前の高速バスに乗るため、とくに何をするでもなく、
「佛等庵」に別れを惜しむべく写真を撮りまくる。
帰りは疋田さんと真木さんの車に分乗。
普段は一週間に一度くらいしか下山しないという疋田さん。
3日間私たちのために車を運転してくださった。
車中、疋田さんのこれまでの人生にも興味を感じ、根掘り葉掘り聞いてしまった。
しつこく聞く私に疋田さんは一言「そんなに人生、計画的に生きてきたことないからな…」。これぞ、私が求めていた言葉かもしれない。
計画をたて、それをこなさないといけないのではないかと、どこかで思っていた。だからどうしても「あくせく」してしまう。しかしこの3日間お会いした人たちもは、なんだかとてもゆとりがあるようにみえた。
藤川さんは私たちを、ここ「佛等庵」に引き連れて、何を伝えようとしたのだろうか。
自然の偉大さ、ゆとりを持つ大切さ、好きなことを続ける生き方……。「ほら、隣で買ったサカナを炭火で焼いて、ここで酒飲んだらうまいやろ」。なんてことはない、生きることの楽しさを、またひとつ教えてくれたのだった。
(Text
by Noriko Egashira)
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