千葉の棚田で酒米を
――酒造りオーナー体験記 IN 鴨川
<<田植え編>>
朝起きて、部屋のカーテンを開けると、雲の合間から薄日が差し込んでいる。
前日の天気予報によれば、今日は「曇りのち雨」。
「まあ、そのうち曇ってくるだろう。午前中に雨が降らなければベストだな」程度に、そのときは考えていた。
だが、天気予報は見事に外れた。
雨が降るどころか、時間の経過とともに青空が広がっていったのだ。
私は30度を超す真夏のような炎天下で、初めての田植えを体験することとなった。
■美味しい酒を求めて参加者は200名以上
2004年5月30日。今日は「大山千枚田酒作りオーナー制度」の田植え実施日である。
JR太海駅近くの「あらい旅館」を8時40分頃チェックアウトし、一路集合場所である「棚田倶楽部」に向かう。
国道128号線の長狭高前交差点を左折し、長狭街道へ入って15分ほど走っただろうか。
見覚えのある景色が見えてきた。
「大山千枚田保存会」のホームページに載っていた目印、「安田自動車」があるところだ。
「ここ、ここ!ここを左折!」
私の急なナビゲーションにも動じることなくハンドルを切る、ベッキー。
想像していた通り、ベッキーの運転は上手い。
少し細くなった道を進み、これまたホームページに載っていた写真と全く同じトンネルを抜けると、
目の前に棚田の風景が広がってきた。
時計は9時を少しまわったところで、まずは予定通りである。
そう・・・天気以外は・・・!!
駐車場に車をとめて外に出ると、とにかく暑い。
日差しもかなり強く、「もしかして山の上だから?」などと、馬鹿なことを考えてしまうほどだ。
そういえば、家を出るときにKAZUに言われたんだっけ・・・。
「麦わら帽子、持っていったほうが良いんじゃない?」
あ〜あ。帰ったら「俺の言うことを聞いとけば良かったのに」って、言われるだろうな。
ちょっとくやしいけど、仕方がない。天気予報が悪いんだ。ふん!
受付で、担当する田んぼの名前が書かれた紙をもらい、
あらかじめ申し込んでおいた1足1000円の田植え足袋を購入、
さらに交流会の費用(2000円/人)と引き換えに参加券をもらう。
あとは、10時からのオリエンテーションまで、日陰で休んでいなければ・・・。
この炎天下では、油断すると熱中症になってしまう。
それにしても、すごい人である。駐車場も結構いっぱいだったし、まさかこんなに盛況だとは考えていなかった。
すでに棚田倶楽部内に空いている椅子はないし、
受付にはまだ人が並んでいる。いったい今日は、何人くらい参加するのだろう?
答え=210名。釜沼地区に70名、奈良林地区に140名、
2ヵ所に分かれて田植えをやるとの説明が、オリエンテーションであった。
挨拶に立った保存会の理事長曰く、
「酒という字が入っただけで、こんなに人が集まるとは・・・。
日本人はなんて酒が好きなんでしょうね」とのこと。
へぇ〜、そうなんだ・・・。このオーナー制度で最終的にいただける一升瓶3本よりも、
農作業体験そのものが目的の私にとって、これは少し意外な話だった。
■いざ、田植え!

★超初心者のための田植え講座★
(4)一人が3〜5条くらいを担当し、1列になって進む。 田植え縄は、30センチ(10寸)くらいの間隔で一番端の人が動かす。 |
さあ、いよいよ田んぼに入るぞ〜。どうか、シリモチをつきませんように・・・。
昨年、秋田県大潟村で稲刈りをしたときにも感じたことだが、
「刈る」あるいは「植える」こと自体は、決して難しいことではない。
問題は足場が泥でしっかりしていないため、まともに歩けないということだ。
大潟村でお世話になった農家の方の言葉が思い出される。
「手入れのいい田んぼは、それほど足を取られない」
田んぼに入るより見学に時間を費やしている人によれば、
「奈良3」は奈良林地区の中で最も足が深く入っているとのこと。
それでもふくらはぎくらいまでで済んだということは、手入れがいいということなのだろうか。
あるいは私が慣れてきたのか。いずれにせよ、田植え足袋の威力も手伝って、
思っていたほど「一歩」が大変ではなかったように思う。

順調に進んでいるように思われた田植えだが、三分の二くらいの地点でハプニングが発生した。
苗が足りないのだ。
どうやら初心者ばかりだったため、一度に植える苗が多すぎる人が続出して、足りなくなってしまったらしい。
インストラクターのおじちゃんが私たちの植えた苗をチェックする。
「ほら!1、2、3、4・・・10!10本もある!」
きつ〜い、ダメだしだ。そんなこと言われたって、1本ってどのことを指すのか、よくわからないんだもの・・・。
ごめんなさい・・・。
一箇所に植える苗が多すぎると、ぶつかり合ってよくないのだという。
「間引き」と同じ論理かしら?と勝手に理解することにした。何事も勉強と経験である。

■とりあえず、ビールがあれば・・・
何はともあれ、シリモチをつくことなく、無事田植えは終了した。
再び軽トラックに乗って、棚田倶楽部へ。泥だらけの足を洗い、交流会が始まるのを待つ。
「ビールが飲みたい。買ってくればよかった」と嘆く私。
「買ってきたとしても、温くなっちゃったでしょ」と諭すベッキー。
似たような会話を何度繰り返しただろう。
私は、ビールを待たされているときほど、不機嫌なことはないのだ。
その上、2時間近く太陽の下で労働した直後である。
まずは、ビール!これしかない。
が、しかしである。一口飲めばこっちのもの。
他の交流会参加者の「食べる物が、まだ出てないじゃない」という不平不満なんぞ、知ったこっちゃない。
私は35缶片手に、いろんな人と話をした。
80歳を越えて、今なお現役で田んぼに入るおばあちゃん。
なんだかやたらに悪口を言い合っていると思って、よく名札を見たら同じ苗字だった、ラブラブのご夫婦。
君津に住み、謎の山小屋(?)を運営しているという、とても場の盛り上げ方が上手なおじさん。
どうしてだか、「これで日本の将来も大丈夫だ」と嬉しそうに私をベタ褒めしたおじさん。
皆さん、本当にありがとうございました。
このホームページを見て、もし本名を明かしてもいいということであれば、是非ご一報ください!?
でも、私の名前は「江頭」じゃなくて「守屋」なんです。
次回草刈りの時には、自作の名札を持っていきますので、よろしくお願いしますね!
・・・ということで、次回へ続く