活動報告

坊主と行く体操教室

「世界中の子供たちが幸せになりますように」
          〜戸田市スポーツセンター体操クラブ〜

埼玉県、戸田市。JR埼京線戸田駅の西、徒歩7分ほどのところに、戸田市スポーツセンターはあります。1周300mの陸上競技場、バレーボールコート2面分の広さがある屋内競技場、室内外に備わったプールのほか、テニスコート、柔道場、卓球場、弓道場、トレーニングルームなど、かなりの施設を備えた総合スポーツセンターです。
 その中心に建つセンター棟の4階で、ジュニア向けの体操クラブを運営していらっしゃるご夫婦、菅原寛(ひろし)さん、たか子さんはそれぞれ、世界選手権、オリンピックに出場したことがある元日本代表の体操選手。子供たちに体操を教え初めてから、もう25年以上にもなるというベテランです。
 藤川さんがご夫妻の招きで、体操クラブに通う子供たちのお母様方にお話をするのは、今回で2回目。普段は床運動に使用しているマットの上で、円になり、いわゆる「体育座り」をしているお母様方に向かって、藤川さんは自己紹介を兼ね、著作本「タイでオモロイ坊主になってもうた」を出版するに至ったいきさつから話し始めました。


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「自分は話始めると、あっちゃこっちゃ話が飛んでいってしまうタイプやから、質問してもらうとええんやけど・・・」と最初は遠慮気味だった藤川さんも、少しずついつもの調子に戻り、自分の孫と同じ世代の子供を持つ親に、熱く語りかけます。
「今の一番の問題は道徳いうか、人間はどうあるべきかを小さいときから教わっていないことや。自分も教わらへんかったから、こんなええ加減な人間になってしもうたんやと思うけどな」
「今、ここに座っている、ここに生きているということは、親がなかったら絶対ないこと。その親の親がなかったら絶対ない、ということを考えて欲しいのや。遠い遠い昔から我々の命は続いてきたから、今自分がいるんや、ということを子供たちに教えてあげて欲しいんや。今だけの命やと思うから、簡単に死ねるし、他人の命も奪えるんやと思う」
「仏教では「生きとしいけるものは殺してはいけない」というんや。ということは、周りの命も自分の命も同価値や。そういう観念の元に仏教は生まれてるんや。それを考えたら、地球上にあるもの皆、同価値なんや。ましておんなじ人間同士で、あいつは価値がないとか、自分より劣っているとか、そんな考え方は絶対湧いてきんはずや。今の子供たちにそういう精神をちょっとでも学んでもらいたいんや」
「まず自分を愛する。自分が幸せにならなかったら家族は幸せにならない。家族が幸せにならなかったら社会は幸せにならない。まず、自分の幸せを願うてください。お母さんが元気で明るかったら、子供たちも幸せになる。子供の犠牲になることは、あまりええこととは思えない」

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 藤川さんの話が終わると、菅原ママにバトンが渡されました。「ありがとうございました」と藤川さんに一礼した後、お母様方に向けた菅原ママの第一声には驚かされました。
「ただ、この話をこのまま聞いている人は馬鹿」
 えっ?ここに来ているお母様方って、ある意味お客様じゃないの?という、私のよけいな心配をよそに、次から次へと厳しい言葉が続きます。
「大概、親が子供をつぶすから。言っとくけど。親が口出せば口出すほど、その子が悪くなる。心も貧しくなるし。応援することはいいと思うけど、指図はやめてください」
「まず皆さんが考えるのは、勝った負けた、上手くなるかならないか。じゃ、やめてどうするの?他の道に行っても同じです。ひとつのことをある程度できて、そこを我慢することによって何かが作れるわけじゃないですか。それが一番大切なことだとわかんないで、成績だけで考えちゃう」
「自分は頭良いと思って、子供の教育を考えているかも知れないけど、私から見たらちゃんちゃらおかしいこともいっぱいある。さっき話に出た道徳。全然出来ていない子がいる。常識ですから。「ありがとう」「いただきます」。当たり前なんです」
「自分を分析できなかったら、子供なんか分析できないですよ。子供は他人ですからね。ただ産んだだけですから。ほっといたって一人で育つ。でもその道を導いてあげるのは親ですから。母親が一番の教師です」

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 菅原夫妻運営の体操クラブでは、お母様方が体操の審判員の資格を取るためのサポートもしています。その活動の目的のひとつは「子供の苦労や大変さを親が理解できるように。体操を通じて子供と友達になって会話が弾むように」だとのこと。子供たちを指導するだけでなく、親子関係のことも考えていらっしゃる姿勢に頭が下がります。と同時に、菅原ママのように愛情を持って叱ってくれる人がそばにいる幸運に恵まれた、体操クラブのお母様方をうらやましく思いました。

 藤川さんいわく菅原ママは「立派な女やろう?ひとつのことを成し遂げた自信から発せられる言葉には、重みがあるんや」。続けて私には「お前もああいう女になれ!」の一言。
 はい。せいぜい精進させていただきます。でも藤川さんがお母様方に語っていた「世界中の子供たちは、みんな自分の子供や」と思えるようになるには、まだまだ修行が必要のようです。


Text by Miwa〜舞羽〜Moriya